食べ方のこだわり お客様は神様?【飲食店での食べ方をめぐるトラブル】
父の代から寿司店を営んでいます。
宣伝に力を入れた結果、新しいお客様が増えました。
うれしいことではありますが、マナーがよくないお客様も増えています。
例えば、寿司のネタだけ食べて、シャリをきれいに残す女性のお客様。
「心を込めて握っているから一緒に食べてみて欲しい」と言ったところ、
「お金を払っている客の自由だ。好きなように食べる権利がある」と
言い返されてしまい、どうにも釈然としない気持ちです。
本当に好きなように食べる権利ってあるのでしょうか。
(寿司店 大将 40代 男性)
「食べ方」を理由に退店要求できるか
「とんかつの衣はがし」や「寿司のシャリ残し」など、食べ方をめぐって店と客がトラブルになることがあります。店としてはプライドをもって提供した食事を想定通りに食べてもらえないことを遺憾に思ったり侮辱されたように思う方もいるでしょうし、一方で客としてもカローリー制限や苦手た部位があるのかもしれません。このようなトラブルが起きた時、店として客に退店するよう求めることなどの主張をすることは可能なのでしょうか。
飲食店における「契約」とは
心情的に「何を食べにきたのか」という気持ちになることは理解できます。しかし法的な解釈としてどうかとなると、別問題です。
飲食店では契約書を作るわけでもありませんのであまり意識しませんが、飲食店での飲食も立派な「契約」です。この場合、お店はお客さんに食事やサービスを提供し、お客さんはこれに対して代金を支払う、というのが、「契約」の基本的な内容と考えてよいでしょう。
「お客様は神様です」なんて言いますが、法律の世界では、両者とも平等です。もちろん、契約の内容は当事者が自由に決められます。たとえば、高級店で店側がドレスコードを定めることや、食べ放題の店で食べられない量を頼んで追加費用を請求されることもあります。
今回のような「食べ方」の問題も、例えば、「店主の決めた食べ方で食べてもらえない場合、退店してもらう」というような約束(契約)になっていたのであれば、お店は、お客さんに退店を求めることができます。
事前に「食べ方」についてルール化する
たとえば、あらかじめ「店主の指示した食べ方を守っていただかないお客様は退店していただきます」といった張り紙でもしてあって、客がそれを見て入店した場合には、店と客の間に「決められたルールに従って食事をする」という合意があったといえます。この場合は、店側は退店してもらうことができると考えられます。
しかし、そのような明示が事前にない場合は、法的には店が客に退店を求めることは難しいです。その後に食事の提供を拒否したりした場合、一方的な債務不履行と言われる可能性もあります。
店として取れる対応
対応としましては、①張り紙や、入店時の説明などで、しっかりと、お客さんに了解をしてもらう方法②次回以降の入店をお断りする方法、があります
店は、契約の内容を定めるのも自由ですが、契約自体を結ぶかどうかも自由に決めることができます。つまり、お客さんを選ぶことは可能だということです。マナーが悪かったり、店の雰囲気に合わないお客さんには、今後の入店をお断りするというのは、一つの分かりやすい方法かもしれません。
「食べ方」をめぐるトラブルでお悩みの方は、飲食弁護士の石崎冬貴にご相談ください。