高級レストラン(ガストロノミー・グランメゾン・オーベルジュ)
高級レストラン(グランメゾン・オーベルジュ)の経営においては、下記のようなトラブルやお困りごとはありませんか?
●料理やサービスのクオリティに対して、満足してもらえなかった
●他のお客様のドレスコードやマナーがきっかけで、お客様同士でのトラブルや、対応を巡ってクレームに発展した
●競合店が、自店のスペシャリテやメニューを模倣(パクり)している
いわゆるグランメゾンなどの高級レストランでは、高単価ゆえに、高品質な料理やサービスが求められます。お客様の眼も非常に厳しいといえるでしょう。日常的に細かなトラブルが起きるということはありませんが、一度起きると、紛争が拡大するケースもみられます。高級レストランでは、料理、サービスのいずれについても、求められるクオリティが高い分、小さなトラブルでも大きな風評被害に至る可能性があります。ここでは、飲食業界を専門に取り扱い、多くの紛争を解決してきた弁護士が、高級レストラン(グランメゾン・オーベルジュ)の経営者や店舗責任者、ホールスタッフが知っておくべき、法律知識について解説します。
目次
【よくあるトラブル①料理やサービスについて厳しいクレームを受けてしまった】
最も多いのは、サービスへのクレームです。高級レストランのお客様は、非常に厳しい眼で料理やサービスを見極めます。お客様からのご意見は、もちろん、お店にとって宝ですから、しっかりと受け止め、今後の運営に活かすべきでしょう。ただ、こだわりの強さが理由で、ともすると、お店に対して、主観を押し付けてしまう場合もあり得ます。実際に、サービスに満足できなかったお客様が、総本店に直接クレームの連絡を入れるなど、大騒動に発展したケースもありました。そのケースでは、弁護士から丁寧にご説明しましたが、どうしてもご理解いただけず、お店と協議した結果、最終的に、今後のご来店をお断りすることになりました。残念な結果とも思えますが、全てのお客様に満足いただくことは不可能です。高級レストランとして、品質やサービスなど、自信をもって提供し、間違いないと確信している場合には、自信のスタイルと合うお客様にご来店いただくという判断も必要と思われます。
【よくあるトラブル②マナーの悪いお客様に対して、他のお客様からなんとかしてほしいという要望があった】
高級レストランでは、一定のドレスコードやマナーが定められているのが通常ですが、重要なのは、それを事前に伝えておくことです。
伝えていない場合、そのお客様としても、「そんなことは聞いていない」となり、納得してもらったり、直してもらうことは非常に難しくなります。
逆に言えば、事前にお伝えしておけば、そのルールを守っていただけないお客様に対しては、ご入店をお断りしたり、退店していただくことも可能です。
コースメニューしか設定のないお店で、パスタだけを頼もうとしたお客様とトラブルになったというケースも話題になりました。
服装の基準、お子様連れの可否、喫煙の可否、コースのみかアラカルトか、食べ方の指定など、お店はルールを自由に設定することができますから、お店の雰囲気に合わせて設定してみてください。最近では、料理や店内の写真撮影を巡って、他のお客様が写ってしまったとか、勝手に料理をインスタグラムにアップされてしまったというトラブルもあります。この場合は、他のお客様の迷惑にならない範囲で撮影してもらったり、もし撮影されてしまった場合には、削除されたかお店の方でできる範囲で確認すべきです。
お客様同士のトラブルに発展しないように、事前のルール化や、トラブルの際の対応方法をホールスタッフに周知しておきましょう。
【よくあるトラブル③近隣の繁盛店で、うちの店とよく似たメニューが名物料理として出ている・・・】
高級店の場合、必ずスペシャリテがあります。スペシャリテは、シェフが、できる限りの素材と技術を使い完成させた自信のメニューですから、そのメニューも本当に素晴らしく魅力的です。
飲食店は、オマージュや模倣が当たり前になされる業界です。確かに、色々な人が色々な方法でアレンジを加えることで、食文化は発展していきますので、全ての模倣を禁止するのは明らかに健全ではありません。そもそもが「食事」という人間に必要な行為ということもあります。ただ、あまり露骨にやられると、やられた方はモチベーションが下がってしまいます。
結論的にいえば、レシピ自体を法的に保護することはかなり困難です。そのため、極端なことを言えば、自分の師匠から教わったレシピを使ったり、客として食べたメニューを再現して、そのまま自分の店で出しても構いません。よっぽどデザインなどが特殊であれば、意匠(デザイン)登録はできるかもしれませんが、料理は毎回少しずつ形が変わりますから、現実的ではありません。提供の方法を保護するために、特許を取るという方法もありますが、これも費用対効果を考えると、個店では現実的でないと思います。ちなみに、「いきなりステーキ」のステーキ提供システムは、ビジネスモデル特許を取っています。
もちろん、書籍になっていたり、ウェブで公開しているページ自体を丸々コピーして使えば著作権を侵害しますし、秘伝のレシピを勝手に公開したり、許可なく「〇〇店でおなじみのメニュー」といった宣伝をすれば、不正競争防止法という法律に違反する可能性もあります。ただ、レシピ自体を直接保護するのは難しいということです。
「うちがオリジナルだ」と自信をもって提供し続けること、そして、そのクオリティで勝負することが求められます。
【FOOD LAWYERのご提案】
高級レストランの場合、お客様は、トラブル時の対応の仕方自体も見られているといってよいでしょう。サービスを含め、従業員の教育を徹底し、紛争を未然に予防することが求められています。
逆に、期待に応えられないと、せっかくの美味しい食事も台無しになってしまいます。全体としての評価も下がるでしょう。
上記のような高級レストラン(グランメゾン・オーベルジュ)における対応策としては、
①お客様の意見についてはしっかりと取り入れる。どうしてもお店の方針と合わない場合は、そのことをしっかりとお客様に伝える。
②お店のルールは事前に告知する。お客様同士のトラブルになった場合にも対応できるように、対応方法の徹底と、ロールプレイを用いた研修を実施する。
③知的財産として保護できないか、早い段階で調査しておく。
といった方法が考えられます。
高級レストラン(グランメゾン・オーベルジュ)のオーナー様、店長様において、社内研修や法的なトラブルでお困りの方は、お気軽にご相談ください。