店内での盗難?? どこまで店に責任があるの?【店内での紛失、弁償】
オーナーシェフが腕を振るう小さなフレンチレストランで働いています。
先日ご来店いただいた中年男性のお客さまのジャケットを店でお預かりしました。
お帰りの際にジャケットをお返ししたところ、
内ポケットに入っていた万年筆がないと訴えられました。
高級な万年筆だそうで、弁償してほしいと言われています。
お預かりする際に「貴重なものは入っていませんか?」と確認をするようにしていました。
小さな店内ですので、誰かがジャケットを触っていればすぐにわかると思うので、お客さまの勘違いだと思うのですが、絶対に入っていたと主張されて、金銭で解決してほしいと言われています。
どのような対処をすれば良いでしょうか。
(ホールスタッフ 30代 女性)
預かった荷物の紛失
店が客の荷物を預かった後、客側から「預けていたものがなくなった」と主張された場合、店としてはどのような対応を取ればいいのでしょうか。たとえばジャケットを預かって、帰りの際にジャケットを返したところ「内ポケットに入れていた万年筆がなくなった」と主張されたケースです。
高価な物だと客から説明がなければ店に紛失の責任はない
店が客の荷物を預かる場合については、商法で特別な規定があります。それは「預かったものがなくなったり壊れた場合、その理由が不可抗力でなければ、責任を負う」というものです。つまり、店としては紛失したものを弁償する義務があります。
しかし、これには例外があります。貨幣(お金)や有価証券(金券など)、それに高価なものについては、その内容と金額を明示して預けないといけないということです。たとえば宝石など高価な物が入ったカバンの場合、何も言わずに店員に預けるだけだと特別に金庫に保管しておくなど、それなりの対応ができません。こうした対応ができないのに、法律上重い責任だけ負わせるわけにはいかないということです。
紛失した物が高価かどうか
さきほどの万年筆のケースでいうと、これが高価なものかどうかという点が問題になります。つまり法律上は、万年筆が非常に高価なものであれば、それを聞いていなければお店側は支払う必要はありません。一方、万年筆が高価品とはいえなければお店側が負担しなければならないということになります。
万年筆の中には、ダイヤなどが散りばめられたものもあります。そういったものであれば、もちろん高価なものといってよいでしょう。他方で、ただ他の万年筆と比べて高いというくらいであれば、高価品とは言えません。客観的に何万円以上、という基準はありませんので、個々の事件に即して判断されることになります。
実務上どうするか
法律とは別に、実務上どうするかは微妙な問題です。「壊れた」というのならまだしも、単に「なくした」というものに対し、無条件でお金を払うのは抵抗があります。領収証など金額と購入の事実を示す一定の証拠を見せてもらい、お店側として一応の説明がなされた場合にのみ、落ち着きどころを模索するというのが実務的かもしれませんね。
店内での紛失や弁償に関してお悩みの方は、飲食弁護士の石崎冬貴にご相談ください。